心理学に興味がある人。もしくは心理学を学びはじめている人などは『ラポール』という言葉をご存知かもしれません。
また最近ではビジネスシーンで活用出来る心理学というテイストで書かれた本も多く、上記以外の人も目にされているかもしれません。

「顧客との信頼を築くためにはラポールが必要だ。」
「ラポールを築くことが人間関係を円滑にするために重要なことである。」

なんて言い方をされているのをよく目にします。
そのため、ラポールってなんかたいそうなもののように聞こえるようにも思います。

「実はあなたもラポールを体感しているんですよ!」

と言うと、驚かれることもあります。
ですが、ほとんどの人がラポールを体感しているし、目にもしていると思うんです。

ラポールとは「相手が無意識にこちらに対して心を開いている状態」のことです。
すなわち相手がこちらに対して警戒心を持たないということです。
そもそも心は「よし!開こう!」と思って開くものではありませんので、至極当たり前のことだとも言えます。

僕が分かりやすい例で説明するのは犬がお腹を見せる姿です。
犬がお腹を見せる時というのは無警戒だったり信頼のサインだと言われます。
わんちゃんは分かりやすくお腹を見せるわけですが、おそらく無意識にやっているんだと思うんですね。
このようなしぐさを見せられた時、より愛おしく思いわんちゃんに対しての愛が深まることと思います。

人間同士では相手をラポールの状態に持っていくようにこちら側から意識的に働きかける、ラポールを築こうとすることもできます。
今回はそのうちの一つの方法である「聴き上手」を説明したく思います。

例えば僕がショッピングに行ったとします。白いビジネス用のシャツを買いに行ったとしましょう。
僕がファッション関係のショッピングをする時の要望はけっこう細かいです。
白いビジネス用のシャツでも、「生地の織り」「襟の形」「ガチガチのビジネス用ではないもの」「高からず安からず」だったりいろんな要望があります。
(正直細かすぎるのかも)

「白いシャツを探してるんですけど」
「はい、こちらはいかがでしょうか?」

といった形で無地のそっけない白いシャツをポンと持ってこられたとしましょう。あなたはどう思いますか?
僕ならば「単純に色目だけ合わせた」と感じると思います。
白いシャツっていっぱいあるんだから、色目以外の要望を聞いてくれてもいいんじゃないの?と思うと思うのです。

このように「話を聞いてもらえていない」「こちらの要望はおかまいなしなのかしら」と感じている時には、要望とは沿わない商品をすすめられてしまったりすると押し売りのように感じてしまいます。特にこのシャツが高ければなおのこと。
こういう場合は適当に話を流して立ち去ることでしょう。保証のない「また来ます」という言葉を残して。

ところが違うお店に行くと

「白いシャツを探してるんですけど」
「ビジネス用ですか?」
「ビジネス用だけどカジュアルでも着ると思うんですよね」
「普段着てるシャツのサイズはどれくらいですか」
「肩幅があるんでXLです」

と伝えたところ、

「何点かあるんですけど、とりあえず3つほど持ってきました」「それぞれ同じ白でもテイストが異なるんですけど、どれがイメージに近いですか」
「このボタンダウンのものが近いかな」
「襟元がかっちりした感じのものがお好きなんですか」
「それもあるけど、生地の織りが面白いよね。なんか他にないような織りで」
「わかりました。それならば生地の織りが個性的なものを持ってきますね。金額的にはいかがですか?」
「まあ想定していた額ですわ」

てな感じで話が進みました。
「話を聞いてもらえている」「要望をくみとろうとしてくれている」と感じると、こちらも饒舌になっていって思っていることをすっと言えるようになります。

そして思わぬ商品が出てきても購入してしまったりします。
「白いビジネスシャツ」を買いに行ったのに、店員さんの「この薄いブルーのシャツはいかがですか?生地の織りが面白いですよ」なんて提案されて、結局購入したのは薄いブルーのシャツでしたとさ。

これは極端な例かもしれませんが、それほど極端ではないのかもしれません。
「話を聞いてもらえている」と感じている時点で、店員さんに対してラポールの状態になっていたとしたら納得できます。
商品自体に魅力があって指名買いする時は別として、そうでない時は信頼できる人、すなわちこちらの要望を把握して提案してくれる人から購入したいと考えるものです。高額商品であればなおのことです。
こういう場面でもラポールがあれば、スムースにことが運ぶのです。

これがラポールを構築するテクニックの一つである「聴き上手」です。

僕は営業職経験者なので事例は営業や販売のシーンなどがすぐ浮かんでしまいますが、それ以外でも合コンなんかでもそうだし(モテる人はたいてい聴き上手)、相談出来る上司や先輩なんてのもそうです(相談される人はたいてい聴き上手)。
カウンセリングを学ぶ際には「聴き上手」となるべくスキルやテクニックを(ミラーリングやペーシング、バックトラックなどがその代表例)身につけるわけです。なんせ心を開いてくれないとカウンセリングにならないわけですから。

ラポールを感じる。ラポールを感じてもらう。そしてコミュニケーションが円滑になる。
だからこそいろんな本で「ラポールが重要!」みたいなことを言っているわけですよ。
営業トークを磨くことよりも口説き文句を考えるよりも叱り方を考えるよりも、まずは相手に心を開いてもらえるように考えること。そこからはじめてみませんか?
そこからはじめるだけで、あなたのコミュニケーションは大幅に変化しますよ。