自分の『正しい』を疑え

人は誰でも物差しを持っています。
と言っても定規やメジャーのことではありません。ここでいう物差しは価値観のことです。
正しい正しくない。美しい醜い。面白い面白くない。
人それぞれの価値観があります。

そしてその物差しの違いでストレスが生まれたりします。
ここで一つの例を出してみます。

Aさんは毎朝会社の始業前の1時間前に出社します。
1時間前に出社して机のまわりを整理整頓してメールをチェックする。そして1日の行動プランを立てる。
準備万端整えてから始業時間を迎えることを習慣にしています。
仕事の進み具合にもよるのですが、キリのいいところまで仕事をするとどうしても終業時間を超えてしまいます。

かたやBさんはいつも始業時間ギリギリに出社します。
そして始業時間が過ぎてからメールをチェックして仕事に取り掛かります。
机のまわりの整理整頓をもう終業時刻になろうかというタイミングではじめて、終業時間きっちりに帰ります。
残業はほとんどしません。

そんなAさんとBさんは同期入社。そして役職はともに主任。
給料の額をお互いに聞き出したわけではありませんが、おそらくほとんど同じ額だと想像します。
そのためAさんからするとBさんの働き方は面白くない。なんで熱心に仕事をしている自分と同じ評価なんだと考えてしまいがちです。

さて、あなたはどちらが正しいと思いますか?
ここまでではAさんと答える人が多いのではないでしょうか。

そのことでストレスをため込んでいたAさんは、就業時間とともに退社しようとするBさんを捕まえて不満をぶつけてしまいます。

「なんでお前はそんな働き方をしてるんだ!仕事に必要な準備もろくにしないし残業もしない!もっと一生懸命働こうと思わないのか!会社に貢献しようと思わないのか!」

そこでBさんはこう答えます。

「準備してるって言う割には残業してるじゃないか。定時退社することなんてないだろう。」
「そ、それはだな…。」
「もっと言うなら始業時間の前に仕事をするのも時間外労働だ。メールチェックだって立派な仕事だろう。」
「そ、それは仕事だからしょうがないだろ。」
「俺は労働基準法に則って仕事をしている。就業時間内で仕事をきっちりと終わらせている。それの何が問題なんだ?むしろ時間外労働をして手当を発生させているお前よりは会社に貢献しているつもりだがな。」

このようにAさんは言い返されてしまいました。
腹が立ちますが、Bさんの言い分も正しいので言い返すことができません。
そして最初はAさんだと答えた人の中にも、やっぱりBさんが正しいのではないかと思った人もおられるのではないでしょうか。

ここで確認しておくと、
・お互いに仕事には真摯に取り組んでいる
・お互いに会社に貢献するつもりでいる
ということが言えるわけですね。
ただ働き方が違うだけで、思いは同じなわけです。
だけどその共通した思いに気づかず、全く異なる働き方をする他人が間違っていると誤った解釈をしてしまっただけだとも言えます。

仕事へ真摯に取り組むこと。会社に貢献すること。それぞれの答えは一つではありませんよね。
それぞれに答えがあってもおかしくはありません。価値観とはそういうことだと思います。
なのでAさんが正しいと思うのか、Bさんが正しいと思うのか、いずれも正しい、いずれも正しくないと思うのかもあなたの価値観なのです。

この後の彼らの評価は会社の上司に任せることとして(笑)、僕が言いたいのはこの、人それぞれの物差しを認めることができるかどうか?だということです。

カウンセリングやコーチングを学んだ人は『傾聴』を学ぶことで、相手のことを尊重することを学びます。
同感しないで共感すること。
この違いを理解して話を聞くことで、相手の持っている物差しを尊重することができ、自分自身の物差しを尊重することができるわけです。

「ちゃんとやってるのにうまくいかない。」

もしこう思っているのならば、
・その「ちゃんと」やってるという「ちゃんと」とは何なのか?
・それだけのことをやっているのにうまくいかないのはなぜか?
このように考えた方がいいのではないでしょうか。

自分の「正しい」を信じ切ってしまっていればいるほど、人間は意固地になっていきます。
意固地になることで自分自身でストレスをためて、周囲に軋轢を生んでしまうよりも、一度自分の「物差し」を検討しなおしてみることも必要ではないでしょうか。

ストレスが軽減されるのならば、物差しを作り直す方がいいと思いますよ。
人間の強さはやわらかさです。臨機応変に対応することを心がけていきましょう。

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