その「エンジニア採用」が不幸を生む/正道寺雅信

なんとなく著者が知ってる人っぽいから手にした一冊

私は書店を歩くのが好きです。
だいたい歩くルートは決まっていたりするのですが(書店によって違うけど)、たまに見るのが人事系ビジネス書のコーナーです。
働く人のお悩み解決に貢献するというミッションを持つ私なので当たり前なことですが、もともと人事系の職種についていたこともあって、独立した後もその知識を向上させるために立ち寄るのが目的です。

ていうのはウソウソ。ただ単に人事系の仕事(特に採用)が好きなだけだったりするんですけどね。
個人事業主となった今でも、従業員を雇う予定なんてないのに人事系のことについての勉強は大好きだったりするのです。

そんな時に目にしたのがこの本
その「エンジニア採用」が不幸を生む 正道寺雅信

あれ?このお名前、なんか聞いたことがある…。

 この本で言う「エンジニア」ってIT系のエンジニアです

上の写真をFacebookにアップしてみたところ、コメントがあったのは技術系人材派遣会社勤務時代の元同僚。
やっぱりあの人だよなと納得。同じ会社にいたけど勤務地も違うし(彼は本社東京、私は関西)、あんまりしゃべったこともないんですが何やら上層部の直轄で勤務しておられたイメージがあったので、この本を読んで納得です。
そうか、エンジニア採用のエキスパートだったのか。

とは言うものの、私もエンジニア採用には携わっていたわけで、この本の内容にはすごく興味を持ちました。
なので早速購入して読み始めてみたのですが…、

ん?
ん?
IT系のエンジニアの話しか出てこんぞ?

てな感じで最後まで読み進めてしまいました。
どうやらこの本のタイトルにある「エンジニア」とは「IT系エンジニア」であり、機械系や科学系のエンジニアの話は一切出てきませんでした。
なのでもしエンジニアの方が読んでみようと思われる場合には要注意です。あまり参考にならないものと思われます。

エンジニアの中でもIT系は特殊だと思う

と言うのもですね、エンジニアはエンジニアでもIT系のエンジニアの方っていうのは他のエンジニアとは少し異なる部分が多いと思うわけですよ。
それは現代社会では薄れつつある「職人気質」というものが色濃く残っているようにも思うのです。
技術力があれば、腕一本で食っていくぞという気概ある方が多いように思うのです。

そんな方は就職・転職の際に、この本で言うところの「就社」ではなく「就職」を求められる方が多いと思います。
その例として転職先を選ぶ基準として、会社の安定性や福利厚生などではなく、自分がやりたいことや自分の技術を高く買ってくれるところというのが会社選びの最大のポイントになっているかなと思います。

なので転職活動が難しくなります。
なぜなら会社の安定性や福利厚生などは求人表を見てわかります。
(安定性はわかんねえか)
だけど自分のやりたいことができるか?とか自分の技術を高く買ってくれるのかという判断は求人票だけではしにくいわけです。
仕事内容は単純に説明できたとしても、職人と呼ばれる人が気になる作業環境や(就業環境ではなくね)採用の目的や商品開発の意図や会社の将来像などは求人票に掲載しきれませんから。

そんなバカな!ということが起こっているIT系エンジニアの採用現場

この本ではそんなIT系エンジニア採用の現場で起こっている悲劇が事例として挙げられています。
転職未経験者の方などはそんなバカな!と思われるかもしれませんが、私もこのような事例は見聞きしてきました。

経営者・人事・エンジニアそれぞれが真摯に取り組んでこその採用活動だと思いますが、これらの事例はいずれかが真摯に取り組んでいないからこそ起こった悲劇のように私は思いました。
転職というものが当たり前のようになってきた時代なので、正直なところそれぞれが軽く考えている部分があるように思います。
(人事職に就く前までは私もそう。バカでした。)

転職というのは決して軽いものではありません。
働いてお金を得るということは、人生の中でも大きなウエイトを占めたものです。生活の糧ですから。
なので経営者や人事は生半可な気持ちで採用活動をすると他人の人生をめちゃくちゃにしかねないですし、エンジニア(求職者)も自分の人生なのだから考えて考えて考える必要があるのです。
そのことを忘れてはいけません。

最後に書かれていた企業の改革策は全業種に当てはまるものだと思う

そして最後には採用する側に求められる、企業の魅力向上についての策がまとめてあります。
この最後の章に関してはどの業種の経営者にも目を通してもらいたいと思うくらいです。

今後少子化が進み優秀な人材の確保が困難になります。
それだけでなく労働人口の減少により、現在と同じ社員数を確保することも困難ですし、今後はより少人数でも同等もしくはそれ以上の数字を上げることを考えていかないと、事業運営そのものが難しくなっていくことが予想されます。

そのためには最後の章にあるような思い切った施策が必要であるというのは、私も同意見です。
私の住んでいる滋賀県という地方都市では、未だに完全週休二日制が導入されていない企業も多く(年間休日100日を割っているとか)、大都市の就業環境と比べると明らかに劣っています。
(詳細なデータはないので私の感覚ですが)

今後滋賀県だけでなく地方が生き残っていくためには、労働基準法で定められた待遇を上回るような待遇を提供する必要があるんじゃなかろうか。
完全週休二日制を上回る完全週休三日制とか、残業ゼロだけでなく早く仕事が終わったら定時よりも前に帰ってもいいとか。
正道寺さん、さすがだよ。大賛成ですよ。

そんなことを改めて感じさせる本でした。
IT系エンジニアの方であれば転職を考えていなくてもとりあえず読んでおいたほうがいい本だともいますし、IT系だけじゃなく経営者と呼ばれる人全般は必読だと思います。
ぜひご一読を。

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