コストコの採用情報から地方企業のあり方を考える
最近ネットで話題になっていたのが、コストコの給与についてです。
『コストコが管理職以外「全員時給制」なワケ』(ビジネス+IT)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160809-00010001-biz_plus-bus_all&p=1
同一労働同一賃金という流れになりつつある中、それをいち早く取り入れているのが外資系企業のコストコです。正社員(管理職除く)もパート社員もアルバイト社員も時給制。政府が目指す姿を、もうすでにコストコが体現しているということです。
僕が魅力に感じる一つは昇給のシステムです。
上司の評価ではなくシンプルに労働時間(1,000時間ごと)によって昇給するシステムも、日本では死語になりつつある年功序列のシステムにも通ずるところがあります(ただし昇給には上限があります)。
日本はアメリカの成果主義を評価し、アメリカは日本の終身雇用を評価していると聞いたことがありますが、このシステムにはそのことが表れているようにも思うわけです。
そして最大の魅力は、何より時給が高いこと。地域によっては最低賃金よりも500円以上高い。こりゃアルバイトを雇用している事業所にとっては脅威でしかありませんね。
コストコができた地域のアルバイトの時給は軒並み上がっているようですが、そりゃ当たり前でしょうね。
アルバイトなら時給の高い方を選ぶもの。
もし近所に時給1,000円のユニクロのアルバイトと時給1,250円のコストコのアルバイトの両方があれば、多くの人はコストコを選ぶんじゃないだろうかね。僕ならまちがいなく選びますわ。
そしてコストコに脅威を感じるのは、そう言ったアルバイトを雇用しているところだけではありません。
普通に正社員を雇用しているところにとっても脅威だと言えるでしょう。
時間給を月給、月給を時間給に換算してみると、それが明らかです。
ちなみにコストコの時間給を月給に換算し直してみると、
1,250円(時給)×8h(労働時間)×20.416日(月平均労働日数)=204,160円(月給)
となります。
ちなみに祝日は休日勤務手当として割り増しになりますので、月収はもう少し上がると思います。
http://www.costco.co.jp/p/employment/warehousestaff(コストコ採用情報)
そこで滋賀県のハローワーク求人と比較してみましょう。
販売職(正社員) 滋賀県草津市勤務
カジュアル衣料・雑貨の販売
月給 164,000円〜260,800円
賞与 年2回または16万円〜76万円
安いなあ月給。最低だと17万円ないんだね。だけど正社員だから賞与が年2回出ます。
そう考えると遜色ないように思えますが、大きな違いが休日数です。
コストコの年間休日 120日
この事業所の年間休日 95日
年間休日は25日も違います。
そうなると計算式の数値も大きく変わり、月平均労働日数がおよそ2日増えます。
計算してみると、
164,000円(月給)÷8h(労働時間)÷22.5日(月平均労働日数)=911.11円(時給)
となり、正社員でも時給が1,000円いかない計算となります。
賞与があるから年間で考えるともう少し時給は上がりますけど、そこをどう判断するかですね。
これは違う職種の正社員でも同じことです。
一般事務で月給17万円くらいだとしたら、確実に時給では負けてます。
営業職で25万円だとしても油断はできません。
例えば残業手当が一切出ないとなればどうでしょうか?
毎日2時間の残業がサービス残業だとすると、こんな数字になります。
250,000円(月給)÷10h(労働時間)÷20.416(月平均労働日数)=1,224円(時給)
となり、月単位では時給が低くなってしまいます。
営業職だと残業手当が出ないなんて会社も多いけど、これって自分の価値を安くしているということになります。
コストコのパートタイマーよりも安い給料で働くことになる。それってどう思いますか?
もちろん仕事の内容などの収入以外のものも仕事選びの基準にはなりますから、コストコで働くことを選ぶことがベストではありません。
例えばどうしても土日に休みたい人にとってはコストコで働くことは選択肢から外れます。だけどそうでないとすれば、かなり魅力的だと思うんですがね。僕もコストコが近くにあったら、コストコで働きたいなと思うと思います。
これらのことを考えると、滋賀県栗東市のコストコ出店が中止になった(自民党の先生も先頭に立ってたというのに)ことで、一番ホッとしているのは地元企業かもしれません。優秀な人材を始めとする労働者がコストコへ流出してしまう可能性があったわけですから。
逆に言えば、このコストコのシステムを導入することが優秀な人材を確保する有効な手段です。だって滋賀県内の企業ではこんなシステム見ないですもの(あるかもしれないけど)。
単純に労働力を集めたいだけでなく、優秀な人材を集めたいということであればこれくらいの策をとってもいいんじゃないでしょうか。効果的だと思います。
企業は人なり。
そろそろ人件費を抑えようとする動きから、人件費はかかるものだという考えにシフトしていかないと大変なことになりそうですね。
「やりがい」や「職場の楽しい雰囲気」などをアピールする小手先の手段ではなく、本気で人を採用しようとするのなら抜本的な改革を考えないといけない時期なんじゃないでしょうか。
そんなことを「次はコストコにいつ行こうかな」と考えながら思います。
楽しいもんな、コストコ。