宅急便の値上げはAmazonのせいにあらず

昨日のニュースで、クロネコヤマトでおなじみのヤマト運輸の料金が値上げされることが発表されました。

『宅急便値上げ、正式決定=個人含め27年ぶり』
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170413-00000087-jij-bus_all(時事通信)

なんと27年ぶり!高校野球なら街全体が盛り上がりそうな勢いです。
ただしことが値上げなだけにネットでは違う意見で盛り上がっています。

その論調の多くは『Amazonのせいだ!』というもの。
Amazonを目の敵にしているようなものがほとんどです。おーこわ。

この値上げは本当にAmazonのせいなのか?

私はこの論調に対して驚きを禁じ得ません。
普通であれば値上げした会社を吊し上げるケースがほとんどだと思うのですが(電力会社などはその典型よね)、今回はその会社の顧客を叩いているわけですよね。
またその顧客を利用している人も日本には大勢いるというのに、内資系企業ではないというだけでこんなに目の敵にできるって少し怖いです。
おーこわ。

私が思うに、この値上げの要因は利益の計算を間違えたであろうヤマト運輸経営陣の問題でしょう。
確かにAmazonと契約したということが要因ではあるのでしょうが、安く請け負ったら利益が出ない。これ当たり前のこと。
なのに安く請け負ってしまったのは経営陣のミスだと言ってもいいはずです。

またヤマト運輸に対してはこんなニュースもありました。

『ヤマトが最大7.6万人に未払い残業代支給へ 数百億円規模との見方も』
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170307-00000015-zuuonline-bus_all(ZUU online)

まあ単純に言えば労働力の搾取ですよ。
このニュースを見ると、ドライバーがAmazonの荷物の増加に泣くよりも前から泣いていたことが想像できます。

おそらくですが、なあなあのサービス残業をさせていた状況のまま決算をし、その決算を見てAmazonに対する価格を設定したんだろうなと思われます。原価の設定がそもそも間違っていたのです。
従業員に支払わなければならない賃金を支払わず、利益を上げてきた日本企業ならではの結果ではないでしょうか。

安価なサービスを提供する姿勢はありがたいですが、企業がこけてしまってはどうもこうもありません。
ましてそこで働いている従業員が苦しんでいる状態で提供されているのであれば、正直素直に喜べません。

このニュースは近い日本の将来を暗示しているニュースのように思います

このニュースから感じることが2つあります。

まず一つ目は、このニュースは近い日本の将来を暗示しているニュースのように思えるということ。
おそらくですが、近い将来いやでも各種サービスの価格が上がっていく気がしてなりません。
よく飲食店の価格などで「ギリギリの状況でサービスを提供している」と紹介されることが多いですが、今回のヤマト運輸のように未払い残業代を請求されたら業績が傾いてしまう会社っていうのが日本には多いような気がしてなりません。
さらに言うと、少子高齢化の影響で人材不足となることが確定している現在では、ひと一人雇うのにさらにお金がかかります。給与しかり広告費しかり。
そうなると、商品の価格を上げざるを得ない。当たり前のことです。

そしてもう一つは、人間というものはこんなに情報にコントロールされるものなのだということを感じています。
問題の本質から離れた情報によって、全く筋違いのところを叩いてしまう。その恐ろしさを感じます。

今回の値上げに関しては、ヤマト運輸が経営的な判断で値上げしただけのこと。顧客に罪はない。
顧客を選択する。契約するしないの判断もできるわけですから。

そもそも、ヤマト運輸は昔から情報戦略に長けた企業だと言われています。
運送業界でテレビCMなどに力を入れている数少ない企業であり、社名でなく『クロネコヤマト』というブランドを定着させているところからも、PR力が感じられます。

そのヤマト運輸に関してですが、私が知っているところでは、車内研修であの福島正伸氏が制作に関わったプロモーションビデオ(感動体験ムービー)なるものを放映していたと記憶しています。
(以前福島正伸氏の講演会に行った時にそのVTRを見ました)

私はそのVTRの冒頭を見て違和感を感じました。
『感動体験』を共有することでテンションを上げて、過酷な労働であることから目をそらし、やりがいを感じさせようとするのって、ブラック企業の典型じゃないかと。

私はそのVTRを見ているのが辛くなって、ずっと目をそらしていました。なのでほとんど見ていません。
(本当にいいVTRだったかもしれませんが)
そのときは40歳前のおっさんだったから違和感を感じたんだろうけど、社会について知識の少ない学生ならばコロッとやられてしまっていたかもなと思います。

こんな感じだからきっと、マスコミをコントロールしてるんだろうなという印象を持っています。
実際にニュースを見ていても「未払い残業代」のニュースよりも、今回の「値上げ」や「Amazonとの契約が業務量を増大させている」とかの記事ばかり。すき家みたいに叩かれてもいません。
スポンサーからの広告料で成り立っているマスコミをコントロールしていることを感じています。おーこわ。

どうせ新しい宅配業者が出てくるさ

とまあこんな感じでこのニュースを見ていたわけですが、今後はこのようなニュースがどんどん増えていくことになろうかと思います。
このヤマト運輸のケースを皮切りに、いろんな企業で未払い残業代の請求なんて事案が出てくるのではないでしょうか。

サービス業
広告業
IT関連企業
営業・販売会社

これらの業種を中心に、いろんなところから事案が出てくるんじゃないかなと見ています。

私はむしろそうなった方がこの国のためにはいいのかもしれないと思っています。
もしそのような事案によって倒産する会社が出てきたとしても仕方のないことじゃありませんか。
労働基準法というルールを守れない会社が挙げた利益なんて、神の手によるゴールのようなものです。

サッカーならば一旦ゴールと判定されたものは取り消されることはほぼないのでしょうが、未払い残業代の時効は2年間もあります。
2年間は遡って請求できるので、もし未払い残業代がある人であればどんどん請求していきましょう。
会社のために泣き寝入りしている場合ではありません。

もしそれが遠因として倒産してしまったとしても問題はありません。
自分の権利を主張したまでのことです。誰にも文句は言われません。

そしてもし倒産してしまったとしても、おそらく違う会社が出てきます。
たとえヤマト運輸が倒産したとしても、別の運送会社がそのポジションにおさまるだけのことです。
なのでそれほどの影響はありません。

今後は人の奪い合いをしていかないと企業経営が成り立たなくなるとも言えません。
業界シェアの奪い合いから労働力の奪い合いへ。
そんな時代の到来が近いことを想像させるニュースでした。

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