ブランドは人が育てる

先日息子と京セラドームへ向かっていたときのことです。
僕が住む滋賀県からはJRで大阪に出なければいけないのですが、大阪駅までで電車でおよそ1時間弱。
乗り換えを考えると京セラドームまではもう少しかかります。大人の僕にはそれほどでなくても、小学生にはけっこうな長旅です。
(歳とったから正直僕にもきついかも)

できれば座りたい!

ところがそんな時に限って、席が一つしか空いていなかったりします。
ここはさすがに息子を座らせて、僕は立っているつもりでいたのですが、隣に座っていたシャネルに身を包んだ若い女性(勝手に名付けた)が僕にひとこと。

「どうぞ」


ゆずってくれるの?
でもそこまでしてもらっては…。

「いや、大丈夫ですよ。」
「私、山科駅で乗り換えますから。」
「僕も山科駅で乗り換えるので大丈夫ですよ。」

と、丁重にお礼をのべて申し出を辞退させていただきました。

いやあ、気持ちがいい。
そして気持ちいいだけでなく、シャネルさんに対して尊敬に近いような気持ちが生まれました。

その後、山科駅のホームで目が合った瞬間に息子と二人でおじぎをしました。
その時のシャネルさんの笑顔ったらもう!惚れてまうやろ!

それまではシャネルを着ている人って、いいイメージではなく、なんとなく下品な印象がありました。
特に若い人がシャネルを身につけているのを見ると、あえて下品に着こなしてんのか?と思うことが多かったです。なんか成金趣味的なイメージ。
まあ、やっかみ半分以上ではありますが、みなさんにもそんな印象ありませんか?

だけどこの一件からは僕のシャネルに対する印象はぐっと変わりました。
シャネラーも捨てたもんじゃない。むしろ好印象だと。

このように、ブランドに対する印象は、カスタマーの行いで大きく印象が変わるものだと改めて感じました。
たとえ有名なブランドでも人の行いによって良くもなり悪くもなる。
だからブランディングって一筋縄ではいかないし、ブランディングを専門にしているコンサルタントもいるんでしょう。

だからこそ、そのブランドの広告塔となっているスターには品行方正さが求められるし、スポーツブランドだとプレーでの凄みだけでなく人間としての凄みも求められる。
モデルやタレントや選手へのリスペクトがユーザーにとっては「憧れ」という言葉になる。
ということです。

また、ブランドイメージはカスタマーからの影響のみならず、それに携わる人が影響を与えることもあります。
例えば勤め人にとっては、現在の勤務先がブランドであり、そのブランドイメージを向上させるのは結局のところ自分自身を含めた従業員全員の行い。
それはもちろんアルバイトでもパートでも同じことです。
これは自分たちでコントロールすることができるブランディングです。

このことを深く考えずに、ただ単に目の前の仕事をこなしているだけでは、仕事のできない人と判断されても仕方のないことでしょう。
またそういう人に限って、自分の権利だけ主張することも多いのが事実です。

ブランドイメージは簡単に悪くなってしまうのも事実です。
犯罪などの不祥事はもちろんのことですが、ちょっとしたことでも悪くなります。

カスタマーサービスの対応が悪かった。
お役所仕事でたらい回しされた。
営業車の運転マナーが悪かった。

こんなことでもイメージってすぐに悪くなってしまいますよ。
そうならないためには従業員全員がその勤め先の看板を背負っているという意識を持つこと。
このことがトップダウンでなく自然と身についていると、その会社はきっといい会社なんだろうなあと思います。

そんなことを思いながら野球観戦したのちに、帰路につきました。
チャンスを潰す展開だったこともあり、非常に疲れていましたが、目の前に赤ん坊を抱いたおばあちゃんが立っていたので席を譲りました。
そのとき着ていた服のブランドはTAKA−Qでした。もう少しええ服着てればよかったな。持ってないけど。

そしてそのおばあちゃんとご主人と思しき方から、降りられるときにすごく丁寧にお礼を言っていただきました。
ブランドイメージなんかどうでもよく感じました。

ブランドイメージを上げようということは考えなくてもいい。
ただ、お客さんをはじめとした、いろんな人に気持ちのいい対応を心がけ、求められているサービスや商品を提供すること。
シンプルに、それだけ心がけていればいい。

そのおばあちゃんが降りられた後、「席も譲らずに寝たふりしやがって!」と思っていたサラリーマンの寝息を聞きながら、そう思いました。

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